ビデオcastingマシンとしてのPSPのライバル。
7月27日に行われたファームウェアアップデートによって、ウェブブラウジングとMPEG-4の動画ファイルを再生できるようになったPSP(プレイステーション・ポータブル)。
僕はゲーム機というより、どこでも動画や音声コンテンツが楽しめるポータブル端末として使っていて、ゲームがなくても十分楽しい。
さて、どんな世界にも競争があり、ライバルがいる。
iPodも、サムスンも、MP3プレイヤーで動画再生を可能にするといっている。
iPodは昨日(8月4日)iTunes Music Storeが開店。日本のユーザーに音楽を販売するとともに、Podcastingを次々と経験させていくスタートを切った。予想だけどもシステムと端末のコンビネーションによってガッチリ顧客をつかみ、そのまま動画再生機としてやってくるだろう。
一方のサムスンも「2007年には世界一になる」と鼻息が荒い。
ただ、どちらも現在、動画再生できる端末はまだない。
そんななか、クリエイティブ・テクノロジー社が、動画も再生できる携帯型音楽プレーヤー『ゼン・ビジョン』(Zen Vision)の受注を開始した。
ニュースの記事を見ながら、ゼン・ビジョンとPSPの比較を簡単にやってみたい。
WIRED NEWS「クリエイティブ:iPodに先行、動画対応の音楽プレーヤー発売へ」
すこし引用しよう。
ディスプレーは3.7インチ型、解像度640x480ピクセル、26万2144色表示で、iPod(2インチ、220×176ピクセル、6万5536色)より高画質とPRしている。価格はiPod 60GB版とほぼ同じ399.99ドル。この記事は、ライバルをiPodとして比較されているが、PSPに置き換えてみると、記憶容量と再生できるファイル形式について、ゼン・ビジョンにアドバンテージがあることが分かる。米マイクロソフト社の著作権管理技術『ウィンドウズ・メディアDRM10』を採用しているため、米ナップスター社などのダウンロードし放題サービスも利用できる。1回の充電で、動画再生は最大4.5時間、音楽ならば同13時間。動画形式はMPEG-1、MPEG-2、MPEG-4、DivXなどに対応する。
画面解像度にもゼン・ビジョン優位?と思われる所もあるが、ディスプレイ性能として他の要素と併せて比較すると微妙だ。
|ゼン・ビジョン |PSP
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記憶容量 / 価格 |30GB / 44,667円※1 |2GB / 37,379円※2
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動画再生 |AVI |MPEG-4
ファイル形式 |WMV 9 |
|MPEG-1 |
|MPEG-2 |
|MPEG-4-SP |
|Motion-JPEG |
|DivX 2 |
|DivX 4 |
|DivX 5 |
|XviD |
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ディスプレイ |3.7インチ |4.3インチ
|640x480 |480×272
|26万2144色 |1677万色
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※1:為替レートは$=111.67円 ※2:MSX-M2GN (2GB)価格.com調べ
こうして比べてみると、PSPの記憶容量当たりのコストが非常に気になる。
やっぱりメモリスティックは高い。
そしてゼン・ビジョンの対応しているファイル形式が多いことは、そのまま再生できるコンテンツが多いことや、発信する際に特にファイル形式を調整しなくて済むことから、利便性が高いといえる。
どちらも、「うう〜ん、何とかならないかなあ」と思う部分であるが、違う観点から見ると捉えかたも変わる。
・ファイル形式について
たとえば、PSP用に動画配信できるビデログやポータルサイトを作るとすると、MPEG-4のみ再生可能というのは大変なのだ。
ネット上に出回っている動画や、動画を書き出すツールには、エンコード(ファイルの圧縮)の仕方も、その形式(ファイルの入れ物)も、あまたのバリエーションがある。
それを一つの形式に対応させるには、どこかで誰かがMPEG-4に変換してやらなくてはならない。
動画配信する人が変換するには、そのための知識が必要だし、時間も掛るしで面倒くさい。
ポータルサイトで変換するなら、容量や負荷が大変だ。
その点、ゼン・ビジョンの再生ファイル形式を見ると、ほとんどの主要な動画形式を網羅しているから、配信する側が余計な手間を掛けずに動画ファイルを流しても、そのまま閲覧できる可能性が高い。
そして、この時点で対応できる形式が広がったということは、後に続くiPodもサムスンも、再生可能なファイル形式を減らさずにプレーヤーを出してくるはず。
先行するゼン・ビジョンより少なければ、利便性の点で不利になるからだ。
さあ、そうなってくるとPSPとしても、MPEG-4のみ再生可能というわけには行かないだろうなとの予測がつく。
いつになるか分からないけど、再生ファイル形式を増やすアップデートを行うのではないか?と思われ、そうなるとビデログやポータルサイトを作る者としては、手間とコストが減って万々歳なわけだ。
ついでに、640x480でやってきた動画ファイルも自動的にPSPの動画サイズに合わせて表示するオプションがついていると、もっと良い。
結果的に大きなメリットを呼び込んでくれる、きっかけになるんじゃなかろうか。
ほとんど妄想だけど。
・記憶容量について
ぼくは、無線LAN環境下ではPCに接続することなしで、Podcasting Juice(Nifty)や、Ragio ZZZ(吉本興業、casTY)の音声Podcastがダウンロードでき、視聴できることに、驚きと大変な便利さを感じている。
この一週間、退社5分前にPSPでネットに接続し、帰り道のおかずをダウンロードして家路に着く。という行動が習慣になっている。
また、RSSリーダーのBloglines Mobile版も閲覧できるので、RSSフィードで流れてくるPodcastの更新情報をキャッチ、最寄の無線LANアクセスポイントで随時ダウンロードも可能だ。
そういう体験を経て、そもそもデータを大量に持ち歩く必要性について疑問を持った。
日々新しいコンテンツが出てくるのに、「いつか見たくなるかもしれない」と、過去のものをずっと持ち歩くのってどうなんだろう?
iPodなど、PCを経由してコンテンツを入れてくる端末の場合、PCがある場所や操作できる時間でしかコンテンツを入れられない。
限られたタイミングでしかチャージできないから、できるときには持てる限りデータを入れていく人もいるだろう。
あの大容量は、何時間もの視聴にも耐えるためにあるわけだ。
退屈の海に潜る際の、酸素ボンベみたいなものだ。
でも、家や街中や駅に設置された無線LANのアクセスポイントによって、PCに頼らずにどこでもダウンロードできるとしたら、たくさんのデータを持ち歩かねばならぬ必要性は薄くなる。
また、アーカイブはネット上にあるのだから、自分の手に持って歩かなくても、いつでもダウンロードしてくることが出来る。
いつでもどこでもコンテンツを摂取できるわけだ。
そして、常にあたらしいコンテンツを得られる環境になっても、過去取り溜めたものを頻繁に見るだろうか?
ハードディスクレコーダーでテレビ番組を録った場合もそうだけど、多くの場合は「1回見たら消去」になる気がしてならない。